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2014年06月19日
波出石品女
学僧と噂の女との端居
僧には学問にすぐれた僧、あるいは修学中の僧という意味があるらしい。修行中の僧が人目につくところで女性と居ることはないと思うので、ぼくは前者と見て鑑賞してみた。英雄色を好む・・ということばがあるが、この学僧のところへ足しげく訪ねてくるというかねてからの噂の女性なのである。聞くところによるとあまり評判のよくない女だとか。お堂の広縁に坐し庭を眺めながら女は懸命に何かを訴え、学僧は黙してそれを聴いている。少なからず学僧を尊敬している作者はその顛末が気になってしかたがない。悪い噂が現実にならなければいいがと念じながら、心配そうな視線で遠見している作者が居るのである。『ナナカマド』(1982)所収。
2014年06月18日
波出石品女
若竹の若さと我れの若さかな
竹(今年竹)には勢いと瑞々しさがあるので、よく比喩として使われます。その若竹の若さと自分の若さを比べているのだが、決してうらやましく思って自身の加齢を落胆しているのではない。若竹の勢いに勝つことは叶わないけれど、日々精進して若々しい感性を保ちつつなお成長しつづけたいものだと願っているのである。若いという字をリフレインすることでリズム感を生むとともにその思いを強調している。『ナナカマド』(1982)所収。
2014年06月17日
波出石品女
冷奴こんなによろこばれしとは
告なしに家人が部下を連れて帰宅した、外では話できないプライベートな打合せでもあるのだろう。急いでお酒の用意をしなければならないのだが、あいにく酒の肴になるような材料の買い置きもなく買いに行っている時間も無い。苦肉の策で家人の晩酌用にとかってあった冷蔵庫のお豆腐で何とか繕った。ところが「なんと言ってもこの時期はこれが一番ですよね。最高ですよ奥さん」と大喜びされて、申し訳ないやらうれしいやら・・・といった心境である。『ナナカマド』(1982)所収。
2014年06月16日
波出石品女
ステンレス流しに映る顔涼し
カピカに磨き上げられたステンレス流し映っている自分の顔が涼しく見えたというのである。水に濡れて作業中のステンレス流しでは鏡にはならないので、恐らく手入れのために懸命に磨き上げた直後、流しに自分の顔が鮮明に写っているのを確認して、そのできばえに大いに満足し思わず笑みがこぼれた瞬間であろう。日常の何でもないことをユニークな作品に仕上げてしまう品女調を非凡なテクニックだと決めつけて欲しくない。そうではなくて作者の感性がいつも幼子のように素直で研ぎ澄まされているからである。品女さんの俳句をもの真似するのではなく、視点や感じかたを学んで欲しいと願う。『ナナカマド』(1982)所収。
2014年06月15日
波出石品女
暑に耐へてをる病人の瞳かな
者がナースであるという先入観なしで鑑賞したい。ということになると詠まれている対象はお見舞いにいった病人の入院患者か待合室で診察の順を待っている通院患者、あるいは長患いで自宅に臥せっている人かも知れない。最近の病院は冷房完備であるがこの時代はまだ不十分であったので闘病と暑さの両方に耐えるのは大変だった。口に出して愚痴をこぼしているのではなく虚ろな瞳が訴えているのである。詠まれている対象は本人ではないが、病人に同情している作者の優しい心情が見えてくる。俳句に於いては三人称で詠んだとしても作者の存在がわかる詠み方をしたい。『ナナカマド』(1982)所収。
2014年06月14日
波出石品女
ひつぱつてひつぱつて水着ぬがせけり
親が懸命に幼子の水着をぬがせている。もともと水着は身体にフィットさせるために伸縮性ある生地で作られているのであるが水に濡れると更に収縮して身体にひっつくので、脱がすとなるとなかなが容易ではないのである。自宅の庭でビニール製の小さいプールに水を入れて子供を遊ばせている平和な家族を連想した。水着ぬぎにけり・・・ではなく、ぬがせけり・・・なのでそのように鑑賞した。『ナナカマド』(1982)所収。
2014年06月13日
波出石品女
垂らす足闇に突込む端居かな
飯の準備も整ったので家人が帰宅するまでちょっと一休みと縁側にでてみるとあたりはもうすっかり夕帷に包まれている。しばらく腰を掛けて足をぶらぶら遊ばせ時折通ってくる涼風に癒やされながら無為の時間を愉しんでいるのである。今日一日のあれこれを思い出して反省したり、あるいは句の想を練ってあれこれと瞑想に更けっているのかもしれない。さて、そろそろ家族が仕事から戻ってくるころ、主婦業に戻らねば・・・『ナナカマド』(1982)所収。
2014年06月12日
波出石品女
紹介をいきなりされし汗を拭く
介したいひとがいるからと呼び出された。待ち合わせの場所に着くやいなやすぐさま紹介されたので、緊張のあまりドッと汗が噴き出したのである。お見合いと言うほどではないけれどそんな雰囲気も匂う。月下氷人なる人からあらかじめ話は聞いていたかも知れないが、世間話をするでもなくいきなりの直球紹介であったので心の準備が追いつかず動揺したのかも知れない。想像していた年格好のイメージよりも若々しいイケメンであったことも考えられる。『ナナカマド』(1982)所収。
2014年06月11日
波出石品女
噴水の女神に向きて煙草吸ふ
会的に禁煙、分煙が厳しくいわれるようになり、愛煙家はパブリックなスペースでゆっくりと喫煙することが至難な時代となった。揚句の主人公もそうした迫害からエスケープして公園の噴水広場で心置きない寸暇を惜しんでいるのであろう。同僚や知人と目が合うことを避けて噴水の中央の女神像に向いて立っているひとりの営業マンの姿を連想した。満足に喫煙も出来ずストレスが溜まるうえにうだるような暑さとも戦わなければならない。流れる汗を拭きながら、ささやかな安息を得るのである。あたりに背を向けたこの姿勢が一番リラックスできるのであろう。『ナナカマド』(1982)所収。
2014年06月10日
波出石品女
サンダルの指うごきゐる女かな
ンダルはメッシュ靴、白靴とともに夏靴の季語とされている。婦人用に素足にはくスマートなものが多く大抵は指先が見えているのである。最近は極彩のマニキュアなどでおしゃれをした女性もよく見かける。揚句はその指先だけに焦点を絞った。どんな場所でどんな状況下でどんなスタイルなのか等々の情報はすべて省略されていて鑑賞する側の連想に委ねているのである。指が動いているのは無意識なのか、あるいは他人の視線を感じて動いたのか・・・といろいろ想像はしてみるが、女性心理を分析するのは難しく男性としては、このあたりまでの鑑賞が限界。『ナナカマド』(1982)所収。
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