四季選集に選んだ作品を鑑賞しています。
四季選集に選んだ作品を鑑賞しています。
何でもない情景であるが前列の赤札を詠んだことで、そのうしろに高額な苗木も並んでいるであろうことが連想できる。赤札の苗木はあくまで客寄せのための特価品。売り主はなんだかんだと上手に口上を述べては安心できるものをと奨めるのである。(毎日句会2011年3月)
みのる選では、『口開く古墳』であったが、『古墳口開く』に添削させて頂いた。古墳はあくまで脇役、梅の丘を主役にしたほうが季感が動きにくいからである。麓から梅の丘を見上げた写生句で、口を開いた古墳の表情からは、啓蟄の温かいお天気であることも連想できる。(毎日句会2011年3月)
獺の祭という季語は、川獺が捕った魚を岸に並べておくのを、先祖の祭りをすると見立てたもの。また正岡子規が獺祭書屋主人と号したところから子規の忌日を獺祭忌ともいう。ちらかった自分の机辺の様子を獺の祭と詠んだが、ふと子規居士の生業にも思いを馳せた一句であることは言うまでもない。(毎日句会2011年3月)
苗木の名札に書かれた字をかな釘文字といった。説明がなくともそうだとわかるのが佳句の要因である。おそらく催し物として開催されている植木市であろう。最近はカタカナで表記されることが多いが、この売り主は昔通りの漢字名で、しかも画数の多い字であったのかも知れない。(毎日句会2011年3月)
デパ地下とは、日本の百貨店(デパート)の地下階にある食料品売り場を指す通称で、おおかたは婦人の客で賑わう。早春はまだ寒いので外出も億劫だが、啓蟄の頃にはようやく春らしくなり人出もふえたのである。『春闌けてデパ地下に・・』では平凡、『啓蟄』の季語を斡旋したことで非凡な作品になっていることに着目したい。(毎日句会2011年3月)
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